オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
椀に目を凝らしながら、向居は聞き捨てならない、とのばかりに、眉間にさらに皺を寄せる。

そうよ。さっきのランチだって「敷居が高い店は緊張する」とか言いながら、いざコースが始まったら余裕しゃくしゃくで女将さんと食材やら調理法やらについて会話したりしてさ。
「以前に企画を考えた時に、にわか仕込みで覚えただけだ」なんてご謙遜されていましたけれど、にわか仕込みだけで、あんなに女将と話を弾ませられるかっての。

「その調子ですよぉ」と励ましの言葉を残して、店員さんは別のお客さんの出来栄えを見に行く。

黙々と絵付けに没頭する私と向居。
慣れてきた私はもっと筆が進んで、次第に様になっていく碗にほれぼれし始める。
その横で、向居がまた変な声を上げた。


「あれぇおかしいなぁ向居さん、描いている絵柄って同じだったはずですよねぇ??」


笑いをこらえながらここぞとばかりにからかう私。
向居はじとりと恨みがこもった目を向けた。
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