オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「一度も告白するタイミングなかったの?」

「あったさ」


ぽつりと向居は言った。


「告白しようと決心した時があった。社内行事の機会をねらって。でも運悪く、そいつはその時に別の男とくっついちまった」

「なんと…」


間が悪いというか、つくづく恋愛運がないというか…。


「…可哀そう。どっから見ても恋愛に苦労なんかしなさそうなのに…」

「そりゃどうも」


思わず同情した私を、向居がぎろっとにらんでくる。
…こわ、その顔、冗談にしては怖いんですけれども。だから私に八つ当たりされても困るんだけどなぁ!

けど向居はすぐに疲れたように表情をゆるめると、溜息のような吐息をもらし、また漆器に視線を落とした。


「応援するよ…! 今度こそ実るといいね。その子は今は彼氏持ち?」


気分を害してしまったかもしれない、と私が気遣うように言うと、向居は筆に目線をやったまま素っ気なく返した。


「…ああ。そうみたいだけれど」

「そっかぁ。それはハードル高いね」

「でも、実はもう終わっているかも、と俺は踏んでいる」

「おお…! そんな弱っているところに向居みたいな男がガッといったら、すぐにおちるよ」

「へぇ」


筆を止めて、向居がまっすぐに私を見つめた。


「すぐに?」

「そうそう。だから今が絶好の機会よ」

「へぇ…」
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