オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
私を抱きかかえたまま寺社を出た向居は、そこからタクシーを拾い、着物を貸してくれたお店に向かった。
慣れない下駄から解放され、血がにじむ足指に絆創膏を頑丈に巻けばもう大丈夫。
「歩けるか?」
「うん、ばっちりだよ」
私の歩きが鈍くなっていたことには気付いていたけれど、靴擦れしていたとまでは思わずにいた向居は、自分の配慮の無さを詫びるように、細やかに気遣ってくれる。
微笑みつつお礼を言う私だけれど、向居の顔はしっかり見られなかった。
本堂での出来事が、いまだに鮮明に残っていて頭から離れなかった。
向居に抱き締められた。
がっしりとした身体も熱い体温も、抱き締めてくる腕の強さもーーー焼き付けられたように、肌に残っている。