オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
溢れた涙が頬をぐしゃぐしゃに濡らす。
顔が火照り始めるほどに、浴衣の袖が濡れそぼるほどに、涙がとめどなく溢れて、止まらない、止められない、なにかをぐずぐずに崩していく。それは私。
弱い私のちっぽけな心が、ぐちゃぐちゃになって崩れ落ちていく。息ができない、苦しくて、嗚咽がとまらなくて、小さい子のように呼吸を乱して、ただ悲哀の渦に飲まれていく―――。

不意に布団が動く音がした。

眠っていた向居が、ゆっくりと身動きした音だった。

咄嗟に私は涙をぬぐった。泣いているところなんか、向居にだけは見られたくない。

悪酔いしたせいか、向居は気怠そうにむっくりと身を起こした。
身動ぎせずぼうとしている様子から、まだ半覚醒なのがうかがえる。
ほっとした。私が泣いていたことには、気付いていないようだ。

満月の夜とは言え、部屋は暗いし顔はよく見えないはずだ。私は素早く頬の涙をぬぐうと明るい声で話しかけた。


「おはよう。よく眠れたみたいね」

「…おかげさまでな」


ひどいかすれ声だ。
その声で「気持ち悪ぃ」とひとりごちると、向居はもそりと立ち上がり、


「水…」


と、私がテーブルに置いておいてあげた財布に手を伸ばし、買いに行こうとする。
ぐったりとしたその様子に、さすがに気の毒に思えて、私は気遣う。
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