オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
艶のある声で囁かれたあの言葉を思い出し、胸が締め付けられる。
甘く切ないその痛みに、意識せざるを得ない。

私、向居のこと…。

でも、胸にはつかえるものがある。
私なんかは向居に相応しくない…。そんな重い思いが私の胸の中を覆っている。


「今日、何時の発で帰るんだ?」

「え?」


不意に話しかけられ、考えに沈んでいた私は驚く。
そんな私を、向居はコーヒーカップに唇を寄せながらじっと見つめる。


「帰りの新幹線。何時に乗るんだ?」

「えっと…十八時発だけど。向居は?」

「決めてなかった。じゃあ、俺もその時間発に乗ろうかな」

「え?」

「お家に着くまでが遠足って言うだろ。だから、恋人ごっこもお家に着くまで」


笑顔を浮かべた向居に、私はつい視線をそらしてしまった。

だって、気付かないふりはできなかったんだもの。
向居と帰路まで一緒にいられると思って、弾んでしまった胸を…。





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