オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

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タクシーに乗って三十分ほど。
午後四時を過ぎた頃、タクシーは街はずれの海岸線にたどり着いた。

この街は北西の方向は海、北東は山に囲まれ南に向かって城下町が広がっている。
海と山、そして両者をつなぐ清流。豊かな自然に恵まれたこの地域が誇る数多くの絶景のうち、三本の指に入るであろう絶景スポットが、この岬だった。

タクシーを降りた時には、あたりは夕暮れ時で強い西日に照らされていた。
落ちる夕陽を受け止めるように広がる大海原に顔を向けるけれど、眩しくて目を開けていられない。


「すごい絶景ね」

「ああ」


思わず漏らした私の感嘆に、向居が頷く。


「日没はもうすぐだな。ナイスタイミングだ」


「カフェバーはここからすこし歩いた先にある」と言って、向居は人が二、三人歩けるくらいの細いアスファルトの坂道を登っていく。

舗装は奇麗だけれど、かなり急な上り坂だった。
ふうふう言いながら丘の上まで登ると、ウッドデッキが見えてきた。
目的のカフェバーが一番の売りにしている、海岸を臨むテラスだった。


「わぁ、すごい、こんなところにあるのね」

「もとは個人の別荘だったのを店主が買い取ってカフェバーに改装したそうだ」


元個人の別荘らしく、小さな佇まいだった。
向居が小さな木製の扉を開ける。
カラン、という古びているけれど心地よい鐘音とともに入ると、レトロな造りの店内に迎え入れられた。

外見に反して店内は意外に広くて、カウンター席の奥にはテーブル席もいくつか用意されていた。そしてそのテーブル席は海を臨む窓と隣接している。
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