オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
なるほど、カップルが少ないわけね。

まだ春のさわりの時分、店に入る前はそれほどではなかったけれど、陽が傾きだすと風は急激に寒くなる。
岬ともなれば、速度も増すのでなおさら冷たく感じる。


「ずっと見ていたいけど、寒いわね」


言いながら私は自分の腕をさすった。
強風にいいように吹き乱される髪を気にしていると、不意に、背後から大きなぬくもりに包まれた。


「…向居…」

「これで寒くないだろ」


私を後ろから抱き締めて、向居が風の中でもしかと聞こえるように耳元で囁いた。
ぞわりと鳥肌が立ったのは、もちろん寒さのせいではなかった。

向居のぬくもりは温かいというより、とても熱かった。
冷静な向居が内にひた隠していた熱情のような気がして、私の胸は騒ぐ。

「離れなきゃ」と理性がうったえる。
でも、「このままでいたい」と心が抵抗する。
ざばんざばん、と岩壁に打ち付ける白波のように荒れる感情を持て余して、私は夕空の深い朱に心を預ける。

もう観念するしかない。

私、向居のことが好きになってしまった。
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