オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
桜の季節がとうに過ぎた東京では、コンクリートジャングルに負けず新緑がさらに生い茂り青みを深めている。
初春の東京の日差しは、三日間の旅先のそれとは違い、すでに暑さを含んでいた。
会社のエントランスに入った時には、私の背中にはうっすらと汗がにじんでいた。走ってきたせいだ。
ヒールを鳴らして社員が行き交う広いエントランスを横切る。
なんだか、こうして歩くのがものすごく久しぶりに感じる。まるで数年ぶりに訪れたような錯覚を覚えるし、憧れていたこの会社に社員として初めて入った時の感動が戻ってくるような感覚もした。
ふと、前方から若い女子社員たちが歩いて来るのに気付いた。
その一人も、私に気付いていつもの屈託のない笑顔を浮かべた。
「あ、逢坂せんぱーい、おはようございまーす! もう出勤して来たんですか? 具合大丈夫なんですかぁ?」
「おはよう。ええ、もう良くなったわ」
ひきつった笑顔になっているのが自分でも分かる。
勤勉な軍師・逢坂都は、たとえ半日でも『ズル休み』なんてしたことがなかったからだ…。