オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「もちろん、ある程度は事前に調べておいて要所はめぐる予定にはしているけれど、そもそもの俺のスタイルはまずその土地を肌で感じることを重視しているから。他人からの情報とか評価だけで知ったものを詰め込んだだけのツアー観光はしたくないんだ」


なんかその言葉、すごい毒を感じるんですけど。

けれど、悔しいけれど、そのスタイルについては認めなければならないかもしれない。
私の企画は、いつも初動はよくて向居を上回っているけれど、徐々に人気がなくなって、じわじわ伸びてきた向居の企画にいつの間にか越される末路をたどるのほとんどだ。
つまり、向居は口コミやリピーターに高評価されて、私は逆ということになる…。

さすがに作り笑いもできなくて、私は自分の表情が強張るのを感じながら返した。


「…ふぅん。私に俺のやり方を見せてやるから、参考にしろってこと?」

「いやちがう」


向居は苦笑うような微笑を浮かべて首を振った。


「むしろ俺がいつもとはちがうスタイルを経験してみて今後の参考にしたいと思ったんだ。目まぐるしく変化しているこの時代、その時々の流行や価値観をつかむ力は必要だからな。逢坂のリサーチ能力を盗みたいと思ったんだ」

「……」

「いつも言ってるだろ、お前のリサーチ力にはかなわないって」


なんなのこの男。
毒を言ったと思ったら、上げてきて。

私のリサーチ力は上司からも定評がある。
そこについては謙遜しないわよ。だって新卒の頃から誰よりも調べて、誰よりも流行に敏感でいたんだもの。人一倍努力だけはしてきた。その自負はある。

だから、そうして磨いてきた力を褒められるのは素直にうれしい。面白くないけれど、向居だとさらに。
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