オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
直後は二人してきょとんとなって、お互いを見つめるばかりだったけれど、先に基樹の方から口火を切ってくれた。
浮気をしたことを最初に、私のリサーチを盗んだこと、私を傷つけたことを謝罪してくれて、そして自分の愚かさ、弱さ、寂しさ、空しさ―――私が好きになった基樹らしく、素直にまっすぐに伝えてくれて、そして改めて謝ってくれた。

聞きながら、私は涙を抑えることができなかった。いろんな思い出が次々に甦り、溢れて、涙と一緒に流れ落ちていった。
私も基樹に心を尽くして謝り、そうして私たちは正式にお別れをしたのだった。

基樹は最後に、飯田とも別れたことを教えてくれた。


『あの旅行依頼、すっかり飯田とはギクシャクしちゃってさ』


基樹は苦笑いを浮かべながら言った。


『結局俺たち、都への当てつけのために付き合っていたところがあったんだよ。けどあの旅行で向居にもガツンと言われて、お互い目が醒めたというか…自分たちのやっていることに今更だけど自己嫌悪を感じちゃったんだよな。それからはケンカばっかでさ、一緒にいるのもムカついて。それで転職を機に俺から別れを切り出したんだ』

『そうだったの…』


申し訳ない、と浮気された私が思うのは変だったけれど、私はどうしてもしゅんとしてしまって相槌を打つ。
基樹は明るく笑って『都がそんな顔する必要はない』と言った。


『いいんだ、俺にしたら心機一転って感じで』

『じゃあ、今はどこに住んでいるの?』

『マンスリーを借りて、部屋探しを始めているよ。でも正直、新しい職場に変わったばかりで落ち着いた時間が取れなくて…難航中だ』

『じゃあ、あの部屋に残りなよ。私が出て行くから』


すかさず言ってしまった私に、基樹は慌てた顔をした。


『そんなの悪いよ』

『今は仕事が第一優先でしょ? それにどっちみち私、あの部屋は出ようと思っていたから』


どうせ柊介の部屋に半同棲している今だ。新しい部屋を見つけるまで、柊介の部屋に仮住まいさせてもらえば済む。

そうして、遠慮する基樹になかば押し付けるようにして、基樹に部屋を譲る運びになった。

というわけで、今夜は管理会社に出す書類にサインと印を押すために基樹と会ったのだった。
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