オプションは偽装交際！～大キライ同期とラブ・トラベル！？～

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柊介は私を見下ろし、その奥の部屋の様子を一瞥すると、私の手をつかんだ。


「来い都。帰るぞ」

「待って、柊介…！」


なにをそんなに怒っているの…？　と口に出す前に、柊介がその答えを言った。


「恒田と会っていただろ」


愕然となる私の手を引くと、柊介は部屋を出て、待たせていたタクシーに私を押し込んだ。


「ちがうの！　なにか誤解しているみたいだけれど、ちがうのよ？」

「話は帰ったら聞く」


運転手さんの前で言い争いはしたくなかった。
家に着くまでは、お互い泥のように押し黙っていたけれども、部屋につくなり口火を切ったのは柊介だった。


「恒田と会っていたのは事実だろ？」


冷ややかな柊介に「そうだけど…」と口ごもりつつ、私は基樹から受け取っていた先ほどサインした書類の控を差し出して見せた。


「基樹が転職を機にあの部屋に住み続けることになったから、私が退去する手続きをしたの。私の引っ越しが終わったら、鍵も返すわ」


柊介は控をじっと見つめ、しばらくして苦々しい表情を浮かべて私に返した。


「どうして教えてくれなかったんだ」

「…だって、柊介が気に病むと思ったから…」


柊介の眉間に皺が寄った。不愉快げな表情だ。
そんな顔を柊介にさせたことに、今更ながら私は罪悪感を覚える。
柊介はちゃんと説明すれば理解してくれる人なのに、私ときたら勝手に決めつけて、自分勝手な判断をして柊介に余計な気を揉ませて…。


「ごめんね柊介…。ごめん…」