オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
肩をすくめて向居は小さく溜息をついた。


「まいったな、今から宿泊先探しか」


まいったな、って自分で好き好んでそういう設定のロケハンスタイルをとってたんじゃなかったでしたっけ、あなた。
額に手をあてて、いかにも困ってますって様子。なんか、いやにわざとらしい気がしますがーぁ?


「まさに絶妙な利害の一致なのに、噛み合わないなんて残念だな、俺たち。俺は部屋を求めて一苦労し、逢坂は泣く泣く高いキャンセル料を払う…」


キャンセル料。
その言葉を聞いた瞬間、向居のあからさまな芝居に私の心は乱された。

キャンセル料…今回のターゲットは二十から三十代だからそれほど高いグレードは選ばなかったけれど、『上質な旅』ってことですこし奮発しちゃったんだよなぁ…。
交通費はもう仕方ないとしても、宿泊費だけでも工面してもらえれば五万は回収できることになる。

五万。

ロケハン貧乏の私には、十分大きな額だ。


思わず揺れ動いた。プライドも揺らぐ。


…待て、待て私、これは女としての品性の問題だぞ。お金目当てに異性の同僚と同じ部屋で寝るの…!?

そんな私の静かなる葛藤を向居は見逃さなかったらしい。
< 27 / 273 >

この作品をシェア

pagetop