オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
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「さて、これからどこに行こうか」
「宿泊先に行くわ。川沿いの旅館よ」
夜はこれからだ、と言わんばかりの向居に、私は乾いた声で返した。
本当は今からダイニングバーに行くところだったけれど、こんな展開になってしまった今、向居といきなり雰囲気のいい店になんて行く気が起きない。
そもそも、向居とこうしている間にダイニングバーで過ごす時間がなくなってしまった。
夕食の時間もあるし、真っ直ぐ宿に向かうしかない。
ああ仕事が滞った…。
でもまぁメインはやっぱり宿泊だ。
今夜の宿泊先は、この街でも指折りの老舗旅館。
スマホでその旅館のページを見せつけてやると、向居はへぇ、と感心した声を上げた。
「そこ、最近代わったトップが新たな営業方針をうちたてて人気再熱してきた旅館だろ? まだそれほど周知されていないのによく知っていたな。さすがは逢坂軍師」
そのあだ名、やめて。
と喉元まで出かけたのをこらえる。