オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
月が煌々と輝く夜空に広がった大木の新緑が月光を照り返し、緑深い夜の庭園をまるで異界の地と思わせるような妖しくも美しい情景に変えていた。

かすかに水のせせらぎが聞こえる。河川から小川がのびているのがわかる。
それに乗せるように鳴く虫たちの声も、その美しさを余計に際立たせていた。

安らぎを覚えるままに澄んだ夜気をいっぱいに吸い込めば、緑の匂いが爽やかに胸を満たす。

五感が清々しく冴える。
足を踏み入れるごとに、心が浄化されるような心地よさを感じた。

きっと向居も同じような気分なのだろう。二人とも会話するのも忘れ、庭園内の石畳をゆっくりと歩いていく。

すると、淡い電球色が、誘うように温かくやさしく灯っているのが見えた。

まもなく、これもまた情緒あふれる木造建築が姿をあらわした。
建築当初のままの外観とされるそのすがたは、頑強としつつもどこかやさしい雰囲気をかもしだし、緑の庭園に溶けこんでいた。


完璧。
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