オプションは偽装交際！～大キライ同期とラブ・トラベル！？～

これが基樹だったら、私と一緒になってはしゃいでいただろう。
なんて気付くと、歓談を交えて施設内を案内してくれる仲居さんも、こころなしか向居にばかり視線を向けているようにも見える。
上品でしかもこの容姿じゃあ、いやでも目を向けちゃうわよね。

気恥ずかしくなってテンションを抑える私…だったけれども、案内された部屋に入った瞬間、それも吹っ飛んでしまった。


「わー素敵！！」


何回も「素敵！」を言ってしまったが、これが最高潮の感嘆だった。

部屋に入ってきた途端飛び込んできたのは、清冽とした川と青々とした木々が織りなす雄大な河川の風景だった。

この街を流れる川とその周囲の風景は日本の原風景としても昔から人気があるのだけれど、それをそのまま切り取った絵画を思わせるような眺望だった。
それがどの部屋からも見える―――これこそがこの旅館の人気の理由のひとつだった。

そうして、風景に感動したあと部屋内に視線をやると、やっぱり人気旅館らしい趣向を楽しむことができた。

ぬくもりのある木製家具は和室にぴったりの和様式で統一されていながらも、間接照明や壁の装飾品などはモダンなデザインになっている。
レトロでとモダンが絶妙に調和されていて、清潔な畳の香りと相まって落ち着きを覚える。

風情と安らぎを感じることができる、上質な大人の旅…。

これよこれ。