オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
下手に出ていたらいい気になって、たかが恋人ごっこになにを本気になっているのよ。

そう非難してやろうと口を開きかけた―――けど、声を上げることはできなかった。


怒ってる?


再び椅子に頬杖をついて所在なげに私から渡されたスマホをいじっている向居の姿からは、怒りがにじみ出ているのがありありと感じられた。

は?
どうして向居が怒るの!?

と言ってやりたかったけれども、それ以上に向居からにじみでる怒りのオーラに気圧され、声が出せない。
クールの塊のようなあの向居が、こんな露骨に感情を表しているところなんて、今まで見たことがなかった。

だからといって、私の怒りが完全に消えるわけじゃない。


「…逢坂」


こんな男と一秒だって一緒の空間にいたくなかった。
向居の呼びかけに聞こえないふりをして、私は足早に部屋を出て行った。





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