オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
喝采の中、私の拍手だけは力無かった。
むしゃくしゃして、もう一秒だってこの場にいたくなかった。いつまで続くのよ、このやかましい拍手。
惜しみない賞賛は、悠然と微笑を浮かべている一人の男に向けられていた。
向居柊介。
二十八歳という若さながら成績トップの売り上げを保持する企画営業部のエース。
ついこのあいだ企画した冬の商品も大好評で大台に乗った。この喝采はそれを称えるものだった。
今こうして私が不愉快になっているのも、この男のせいだった。
だってもしかしたら、この喝采を浴びていたのは私だったかもしれないのに。
私、逢坂都が勤めているこの会社は、誰もが一度は耳にしたことがある大手旅行会社。
老舗らしからず風通しがよく、上下関係も男女差別もない、つまりは実力主義の社風。
そんな中で私は企画営業部ではNO.2のポジションにいた…いや、甘んじていると言わせてもらおう。
「残念でしたね、逢坂先輩」
しつこく鳴り止まない拍手にお付き合いして、サルのおもちゃみたいに手を叩いている私を見かねて、後輩の女の子が気遣わしげに言ってきた。
私は涼し気な笑顔を作った。