オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
そう囁き、向居は再び窓の外に目をやる。
完全に恋人扱いのその動作はさりげなくも一瞬で、非難する隙すらあたえない。
ていうか…なんだかもうどうでもよくなってきたな…。
一晩無事に過ごし終わって気が抜けたのかもしれない。
あと二日。こうなれば、とことん『ごっこ』に流されてやろうじゃないの。
…それに、向居の恋人の扱い方、嫌いじゃない…。
子どもをあやすようだったけれど、眠気にふやけた心には、その指の動きはひどくやさしかった。
思い出すように、私はそっと頬に指をそえる。
きっと、向居の彼女になれる人って、すごく幸せなんだろうな。
そういえば、向居も乗ってからずっと見ていたな、窓の外。
私と同じようなこと、考えていたのかな。
そう見上げた横顔は、朝日を受けて凛としていて、綺麗にすら思える。
何度目かの今更だけど、本当に整った顔してるなぁ。
イケメンという造語より、端正という熟語が似合う感じ。
新卒として入ったころは、正直、向居は全然目立たない奴だった。
背が高いイケメンがいるなーとは思ったけれど、それくらいの印象しかなくて、言ってしまえば記憶にはそれほど残っていない。
成績も最初は目立つほど良くなくて、私よりも下だったと記憶している。
寡黙でなにを考えているのかつかめない感じだったのよね。付き合いが悪いわけではなかったけれど。
私や基樹たち新卒が仲間意識を通じ合わせて群れていたのに対し、一応群れには所属しつつも、あえて意図的に距離をあけて隅で目立たなくしていた気がする。
だから、気づけば誰よりも先に前を歩いていた。
必死になってやっと群れから飛び出した私の前には、すでに向居が遥か先を走っていた。
そして本当に辛かったのは、ここからだった。
自分の限界以上の力で走ってようやく追いついても、すぐに突き放されてしまう。その繰り返しが続いている。ずっと、ずっと。
こんな状況を向居はどう思っているのだろう。どんな表情をして、走り続けているのだろう。
私には見えない。だって、背中しか見えないのだもの。
向居の背中は、いつだってたくましく、孤高だ。
完全に恋人扱いのその動作はさりげなくも一瞬で、非難する隙すらあたえない。
ていうか…なんだかもうどうでもよくなってきたな…。
一晩無事に過ごし終わって気が抜けたのかもしれない。
あと二日。こうなれば、とことん『ごっこ』に流されてやろうじゃないの。
…それに、向居の恋人の扱い方、嫌いじゃない…。
子どもをあやすようだったけれど、眠気にふやけた心には、その指の動きはひどくやさしかった。
思い出すように、私はそっと頬に指をそえる。
きっと、向居の彼女になれる人って、すごく幸せなんだろうな。
そういえば、向居も乗ってからずっと見ていたな、窓の外。
私と同じようなこと、考えていたのかな。
そう見上げた横顔は、朝日を受けて凛としていて、綺麗にすら思える。
何度目かの今更だけど、本当に整った顔してるなぁ。
イケメンという造語より、端正という熟語が似合う感じ。
新卒として入ったころは、正直、向居は全然目立たない奴だった。
背が高いイケメンがいるなーとは思ったけれど、それくらいの印象しかなくて、言ってしまえば記憶にはそれほど残っていない。
成績も最初は目立つほど良くなくて、私よりも下だったと記憶している。
寡黙でなにを考えているのかつかめない感じだったのよね。付き合いが悪いわけではなかったけれど。
私や基樹たち新卒が仲間意識を通じ合わせて群れていたのに対し、一応群れには所属しつつも、あえて意図的に距離をあけて隅で目立たなくしていた気がする。
だから、気づけば誰よりも先に前を歩いていた。
必死になってやっと群れから飛び出した私の前には、すでに向居が遥か先を走っていた。
そして本当に辛かったのは、ここからだった。
自分の限界以上の力で走ってようやく追いついても、すぐに突き放されてしまう。その繰り返しが続いている。ずっと、ずっと。
こんな状況を向居はどう思っているのだろう。どんな表情をして、走り続けているのだろう。
私には見えない。だって、背中しか見えないのだもの。
向居の背中は、いつだってたくましく、孤高だ。