オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「次、降りるから」

「あ、うん」


停留所のアナウンスが流れて向居が降車ボタンを押す。
ピンポンと鳴り響いた直後、今度は私のバックからスマホが鳴った。

こんな朝早くからラインだ。

相手は一人しか思いつかなくて、私はもう降りる準備をしなくてはならないのにスマホに見入った。

やっぱり基樹からだった。


『いまどこにいるの?』


心配してくれているの??

胸が高鳴った。けれども、高揚は冷静な考えに消える。
一晩経って訊いてくるなんてどういうつもり? 心配しているなら前の晩には連絡してほしかった。

返答に戸惑っていると、画面は次のメッセージを流した。


『まさか旅行に行ってるとか?』


そのまさかだよ。
そっけなく訊いてくるところに、皮肉みたいなものを感じた。
まさか、ってなに。
「まさかの一人旅?」ってひいてるわけ? そのまさかよ。あんたのいい加減のせいで、一人新幹線に飛び乗ったのよ。

まさかの傷心一人旅と思われたくない。けど、向居と一緒だと言うわけにもいかない。

そこに、バスが停まる。降りなければ。
けど、既読をつけちゃったし早く返さないと変に勘繰られる。
とっさに私はメッセージを早打ちして返信した。

『友達の家に泊まってる』

向居はすでに降り口で料金を払っていた。私も駆け寄ってバスを降りた。
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