オプションは偽装交際！～大キライ同期とラブ・トラベル！？～

足を踏んだのは、少し山に入ったところ。
深い森に囲まれ、朝の冷えた空気がひっそりと満ちて清々しい。
小鳥たちのさえずりがやさしく聞こえてきて、穏やかな心地にさせてくれる。

目的の寺は少し歩いた先にあった。
森の中に堂々と構えられている重厚な造りの木門。
まるで異界にでも足を踏み入れるような心地でその門に入ると、柔らかい日射しが差し込んできた。
温かくて元気を与えてくれるような光に、なぜだか気分が高揚してくる。

そうして門を潜り抜けた先に広がる境内に、私は感激した。

やさしい緑葉、美しく敷かれた白い石畳、そして森に溶けこむように建つ重厚な本堂。
それらが朝日をまとった澄んだ空気に満たされ、厳かに輝いていた。
名古刹。
そう謳われるにふさわしい光景だ。

この寺は、一、二を争う人気スポット。日中は観光客で賑わって日常感にあふれている。出店まで出ることがあって、まるでお祭りのように雑然としているイメージだった。

なのに、今は神秘的な気分にすらなっている。
早朝と言うだけあって、出店どころか私たち以外人っ子一人いないからだ。


「嘘みたい…」