陽だまり。
4月9日
春といえば別れと出会いの時期ー。
桜舞い散る暖かい春の風が
頬をなでて眠気を誘う。
俺は高校入学式だというのに
それほど急ぐこともなく
ただいつも通りに制服に着替え髪を整えた。
「忘れ物ない?今日は晴れてよかったわね。」
朝食を食べ終えたテーブルを片付けながら
にこやかに話す母。
何かいつもと違うことといえば
制服は当然新しく着慣れないせいか
少し違和感すら覚える。
入学式ということもあって
胸ポケットには伊崎 大翔(ひろと)としっかり
名札が付いている。
学校に近づくと正門から
手を振る人影が見えた。
「大翔ー!おせーよっ!
今日は入学式なんだから
早めに来いよって昨日言ったろ!?」
見慣れた顔,聞きなれた声ー
陽輝(はるき)は幼稚園からの親友だ。
「お前相変わらず声でかい。
早めにってまだ式まで20分もあるぞ。」
「まぁまぁ!俺らクラス同じだし!
てか俺,さっきまで教室に居たんだけど
席近いとこにめっちゃ可愛い子いてさ!
学校生活それなりに楽しめそー!」
目をキラキラさせる陽輝を横目に
俺は大きなあくびをした。