それでもいいって、いったじゃん。
「着いた。ここ、俺の家。」
颯爽と入っていく彼を、ただ見送ってしまった。それほどこの家には驚かされたのだ。
なんでって、理由はただ一つ。
「わあ………」
見るからに高級マンション。
アパート住まいの私には縁のない厳重な入り口。
「おい、付いてこないと入れないだろ、どうした?」
「ここ………?????」
「ああ、そうだよ。」
「高そう………こわ……」
「いや、なにがだよ。」
「ええ……高そう…」
「知らないけど、高いんじゃない?俺、この家に一銭も出してないからわからん。マンション自体もらいもんだしな。」
なんだか寂しそうに見えて、私を見下ろす彼の胸にぴったりと寄って、袖をぎゅっと掴んだ。
「そんな話はいいさ、中入ろう。仕事明けで疲れてるでしょ?おいで。」
優しい声に、泣きそうになる。
この人は普段誰のものなんだろう。
そう思うとまた涙がにじむけれど、
いまは私が独占しているのだから少しは諦めてしまえとそっぽ向いた。
「うん、おうち、行く。」
「ん、そうしようね。」
いまだけは、陽だまりにいるみたいだ。
あったかくて優しい。
弱々しい2人。