過ぎ行く時間の中で
集合場所は決まって田中さんの家だった。

田中さんは本名『御手洗』だけあり、由緒正しき家庭のボンボンである。

一人暮らしをしているが、顔に似合わず趣味はピアノとふざけたことを言っている。

そこにショージが目をつけないわけがない。
防音壁のついたこの部屋が麻雀ルームに最適だということで、麻雀の時は必ずこの部屋だった。

また、田中さんもまんざらでもなく、他の3人の家が田中の家からそう離れていないのも集まる理由の一つだった。

早速私たちは麻雀を始めた。
一度打ち始めると、くだらない話をしながら、何時間でも、暇があるときなどは、丸一日打つこともある。

「最近彼女とはどうなのよ~。」
ショージが聞いてきた。

「どうって何よ。いたって普通だよ。」
そっけなく私が行った。

「またまた~、付き合ってんだろ~!どこまでいっちゃったのよ!」
ガスが下衆な質問をする。

「無粋だね~。そりゃぁねぇ?」
と言う田中さんも、続きを知りたそうだ。

「知らねぇよ!リーチ!」
そう言いながら、私は麻雀に専念する振りをした。しかし、そう聞かれるのもまんざらでもない気がするのだった。

「うわ、リーチかよ…。結女ちゃ~ん、助けて~、愛しの宇宙ちゃんがいじめるよ~!」
と、ガスが言った。

「そういえば、今日は結女ちゃんは何してるの?」
と、田中さんは言った。

「え?今日はバイトしてるって言ってたな。その後は…、連絡するって言ってた。」
私はそう言った。すると、ショージが言った。

「バイトって何してるの?」
私は、

「ん~、名前しか聞いてないな~。場所とかも知らないし…」
と答えた。

「は?そんなことも知らないの?」
ショージがつっこむ。

確かに、バイト先の名前は聞いてるものの、どんな仕事かも知らないし、そんなに気にも留めてなかった。

しかし、そう言えば少し気になってきたのだった。

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