過ぎ行く時間の中で
とりあえず家に帰って、自問自答を繰り返す。
そんな彼女を疑うようなことをしていいのだろうかと。

とりあえず、家のネットで彼女のバイト先を調べてみた。
確かにそれは彼女が言っていたバイトであった。そんなのがなかったりとか、よからぬ業種だったらどうしようと思っていたぶん、安心した。

少しほっとしたものの、この言葉が頭の中で引っかかった。

『在宅ワーカー随時募集中』

そうだ。ここで働いてると言ってたが、在宅ワークなら仕事をしながら家にいることも可能だ。

あるいはその時間を使って―

『何バカなこと考えてるの。愛してるのはあなただけよ。わからなかったの?』
頭の中の結女があきれて言った。

「愛してるからこそ、疑っちゃうんだよ。わからない?」
と言う私は少々、言い訳がましいかなと思った。

払拭するようにアクセルを踏んだ。

いてもたってもいられなくなった私は、結女の携帯に電話をする。

「どうしたの?」
結女の声が、当たり前だが普通で安心した。

「え、あ、ううん。なんでもない。」
言いたいことがあるのに、何も話せない。

「はは~ん。恋人の声が聞きたかったのかな?」
いたずらっぽく、結女が言った。


「あ、いや…。」
と言うと、

「いやって何よ!」
とツッこむ。おいらの気持ちとは裏腹に、結女は絶好調だ。

「じゃなくて、会えないかな?会いたいんだ。」
私は意を決して言った。これが限界だった。

「ごめん…。しばらく会えないんだ。仕事が忙しくて…。会えるときはこっちから電話するから。」
そういって、結女は電話を切った。

私はやはり、情けないことに疑ってしまっている。疑いを払拭するために、私は色々と動くことを決意したのであった。
< 28 / 30 >

この作品をシェア

pagetop