過ぎ行く時間の中で
私はとりあえず、いろいろなところを当たってみた。

会話の端々に出てきたよく行くお店や、スロット屋なんかも行ってみた。ストーカーまがいだが、バイト先なんかにも電話をしてみた。

やはり個人情報を誰もそんなに話してはくれなかったが、色々まわっていると、結女の友達と言う女性と会うことが出来た。

彼女の名前は、弥生といい、もとはバイトの本社で面接のとき出会ったらしいが、その時、結女と意気投合し、それ以来仲良くしていると言うことらしい。

『まぁ!結局なぜあんなことになったって、弥生からだったのね?』
頭の中の結女があきれて言った。

「こっちで知り合いはほとんどいなかったんだろ?」
意地悪っぽく私はつぶやいた。

弥生から話を聞くと、どうやら近々、田舎にいったん帰るということを聞いた。理由はわからないらしい。

そして、どうやら実家にいったん帰り、用事を済ますとだけ言っていたらしい。

「それと…」
弥生は話しかけたときに、はっとして「なんでもない」と言った。

「私は結女と付き合ってる彼氏です。何でも話してください。」
と、必死で懇願した。

「そうですか…。言っていいのかどうかわかんないけど…。人と会うって言ってたんだよね。」

それを聞いて頭の中で言葉がぐるぐる回った。

「あ、でも結女、最近彼氏が出来て、すごく幸せだって言ってたよ。」
という弥生ちゃんのフォローも頭に入ってこない。

もう何をどうすればいいか、頭の中で解らなくなっていた。今までこんなことがなかったわけじゃない。

自分だって浮気をしたことが無くはない。それは、言うなれば、古い車に乗っていれば、新車に乗りたいのは当然だと言う気持ちはわかるからだ。

また、毎日ショートケーキを食べれば、新たにチーズケーキが出されたら、食べたくなるのは当然だとも思う。

結女の場合、今回の話が真実なら、元々福岡に彼がいて、こっちでも男を作ったわけになる。
その気持ちも普段ならわからないでもなかった。

でも…

今回はいてもたってもいられなく、激しく心がおどった。こんなことは初めてだった。

色々確かめたくなった私は、いったん家に帰り、向かうのであった。

福岡へ―
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