過ぎ行く時間の中で
その日、私はいつものようにすることもなく、スロットをしていた。

勝ちたい。それはそうである。勝たなければ、今日の食事も食うや食わずだから。ただ、負けたその生活がひもじいからといって、別段どうということもない。

しかし勝っても負けても、その日一日の一喜一憂はあれど、私の人生が満たされているという感覚があるわけではなかった。
ただ、怠惰に過ぎ行く一日を、ただ漫然と生きている。
そんな感じだった。

「すいません。」

スロットをしている私に声をかけてくるのは隣の台を打っていた女性だった。
見た目はかわいいし、タイプでないわけではない。

しかし、私はといえば、こんな生活をしてるもんだから、人と接することが嫌いというより、億劫になるのである。

もちろん、女性が嫌いなわけではない。たまに大学の悪友がコンパに誘えば、バカみたいに騒いだり、その場限りに女と遊ぶこともあったが、どこかそれ以上のラインを超えるのが怖い、というか、どこか面倒に感じたりするのである。

その時も正直、
「ラッキー!」
というよりは、
「なんだよ、ったくよ~!」
という気持ちのほうが強かったように思う。


「あの~、すいません。ボーナスを引いたみたいなんだけど、止められないんです。止めてもらえませんか?」


今では店員を呼べば、ボーナスを止めてもらうサービスがあるんですが、その当時はそんなサービスはなかった。

また、昔のスロットは目押し(狙ってボーナス絵柄を止めること)が難しい機種が多かったことは事実である。

しかし、私は『ボーナスも狙えないのにスロットなんて打つな!』といつもスロットをやってボーナスをそろえられない人達を見て、老若男女問わずいらついてしまうのだった。
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