唇『短編6ページ』
闇の中

欠けた月

 


闇の中、わたしは「何か」を掴みたくて手を伸ばす。

固い腕に触れた時、その感触を確かめるように指先をなぞらせた。


掌を探しあてようとその腕にさ迷いながら、わたしは深く深く沈んで行く。


切なさと不安が足元から絡みつく。


このまま、暗闇の底に辿りつくことが出来るのだろうか…?


ぼんやりとそんなことを考えながら、短い溜め息をついた。


その時、不意に腕をつかまれ、引き上げられる。



重なったのは、唇一?



わたしは唇を閉じて、あなたを避けた。




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