唇『短編6ページ』
 



あなたがわたしを呼ぶ低い声が聞こえない。


『何か、言ってよ。』


歯痒くて


『ううん、そうじゃなくて。』


歯痒くて


あの月のようにわたしも欠けていく。


あなたに削られながら、またひとつ、わたしはシーツの海に涙の染みを作る。







これ以上昇れることのないように突き上げてよ。



もっと…


その後は、堕ちて行くから。


もっと、深く…




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