俺様副社長の溺愛秘書
副社長と二人でロビーを横切る。時間も遅く、社員はいない。


どうやら会社近くの店で夜ご飯を食べるみたいだ。



「尚輝、どうかしたの?」


「朱里は俺と暮らすことに………乗り気じゃないか?」



お店に到着した私達を店員が案内する。席に座った私は尚輝に聞いてみた。


思わぬ尚輝の表情に固まった。


尚輝の表情には明るさも自信もなく、落ち込んでいるのが手に取るように伝わってきたからだ。



「えっ?」


「本当は一緒に暮らしたくないだろ?」


「何でそんな事を言うの?」


「乗り気じゃないだろ、朱里は。」



尚輝の言葉に口を噤んだ。


一緒に暮らしたくない?



「そんな事ない。」


「なら、何で『親に挨拶したい』って言う俺に戸惑う?」


「それは――――。」



言葉に詰まる私を見つめる尚輝の表情が寂しそうに見えた。



「朱里は俺を愛してくれてるか?」



尚輝の切ない声が聞こえた。
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