俺様副社長の溺愛秘書
副社長の近付いてくる気配にメモから視線を上げた。目の前に立つ副社長を見上げる。



「噂………聞いたか？」


「はい、私の指輪の噂なら。」



副社長の指が今は嵌められていない薬指を撫でた。



「『副社長と婚約した？』『ただのプレゼント？』。社員の噂になっている。」


「はい。」


「昨日は嵌めてたが、今日は嵌められていない。社員の噂はどう変わる？」



副社長の撫でる指が止まった。見上げた副社長の瞳が私を見つめている。



「きっと………『婚約してないんじゃないか』……って噂になる。」


「………。」



ゆっくりと言い聞かせるように囁かれる副社長の言葉に動く事ができない。


明らかに、副社長モードで甘い囁きではないからだ。


低い声で囁かれる副社長の言葉に耳を傾ける。



「一日だけ嵌められたダイヤの指輪。社員の噂になるのに気づかないか？」


「………。」



副社長が私の前から離れていく。
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