俺様副社長の溺愛秘書
押し黙る尚輝から社長の視線が向けられる。鋭い社長の瞳に小さく息を飲み込む。



「松井さん、婚約したと発表するが大丈夫かね?」


「はい。」


「一度嵌めた指輪は外すべきではない。理由は分かるね?」


「………はい。」


「尚輝は会社の顔だ。嵌めたり外したりでは、変な噂が広まる可能性が高くなる。」


「はい。」


「目立つのは指輪を嵌めている松井さん。それは仕方ない事だ。佐伯に嫁ぐ試練だと思ってくれ。」


「はい。」



社長の鋭い視線が細められ、柔らかい雰囲気を作り出す。



「朱里さん、尚輝は強引な奴だが理解してもらいたい。」


「はい。」


「それと―――。」



尚輝と私を交互に見た社長が低い声を吐き出した。



「会社で喧嘩はしない。上に立つ自覚をしっかりと持ちなさい。」


「………。」


「松井さんも会社では副社長への敬意を忘れずに。」


「はい、すみませんでした。」



社長へと頭を下げた。
< 138 / 167 >

この作品をシェア

pagetop