俺様副社長の溺愛秘書
部屋へと戻っていく廊下で、陽輝が声を掛けてきた。



「話し合う必要あるんじゃない?」


「「………。」」


「兄貴に言いにくいなら、俺が聞くけど?」


「俺が聞く。陽輝、明日の打ち合わせの資料を理解しておけよ。」


「わかった。」



足を止めた副社長に私の足も止まる。繋がれた手に力が籠められ、隣の副社長を見上げる。



「陽輝、朱里と少し出てくる。」


「わかった。おやすみ、二人とも。」



陽輝が背を向けて歩いていく後ろ姿を見送る。




「朱里、少し出掛けよう。」


「今から?」



懇親会が終わったのは21時頃だ。今から出掛ければ、遅くなるのは確定だ。



「二人で夜景でも見るか。」



笑みを見せる尚輝だけど、その瞳は切なさを感じる。


私は大きく頷き返した。


尚輝に手を引かれ、来た道を戻っていく。エレベーターで最上階へ向かうようだ。


無言の尚輝と最上階にあるバーへと入った。
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