俺様副社長の溺愛秘書
予想にもしない言葉に思考回路が停止する。


震える声が思わず吐き出された。



「尚輝は後悔してる?」


「俺はしてない。けど、朱里はしてるんじゃないのか?」


「何で?してないよ。」


「なら、何で嬉しそうじゃない?」



尚輝の表情が変わっていく。歪んでいく尚輝の顔に後悔した。


私のモヤモヤとした気持ちが尚輝を傷つけていたんだと。


尚輝にちゃんと話すべきなんだと。



「朱里は俺と婚約して幸せじゃないのか?」



私から目を逸らした尚輝が夜景の見える窓に映る。唇を噛み締める尚輝が、昔の尚輝と重なった。



『2度と傷つけない。』



尚輝に約束したのに尚輝を傷つけている。私の勝手な思い込みがまた傷つけている。


唇を噛み締める尚輝を抱き締めた。


驚きに揺れる体を強く抱き締めた。



「ごめん、2度と傷つけないって約束したのに。」


「朱里?」


「ごめん。」



尚輝を抱き締めたまま囁いた。
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