俺様副社長の溺愛秘書
陽輝の言葉に動けないでいた。切なさを孕んだ声色に口も開けないでいた。



「俺が先に出逢いたかった――――兄貴よりも。」


「…………。」


「朱里さんを知れば知るほど―――嵌まっていくのを感じる。」



陽輝から視線を逸らせない。尚輝と同じ瞳が私を見つめている。



「朱里!」



尚輝の聞き慣れた声、そしてドアを思いっきり開く音に我に返った。


陽輝から視線を外してドアに顔を向けた。陽輝の手が離れていった。


心臓の鼓動が激しく鳴っている。速まる心臓に大きく息を吐き出した。



「朱里、どうした?」



異変に気付いた尚輝の低い声に笑みを見せた。



「何でもない。尚輝、悠木さん、コーヒーは?」



「もらう。ほら、尚輝も座れ。」



ドアの前で立ち尽くし、私の行動を観察するかのような目を向けている。


陽輝の隣から立ち上がり、キッチンにあるカップにコーヒーを注ぎに向かった。
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