俺様副社長の溺愛秘書
不安気な尚輝の声に閉じていた目を開く。もう一度、大きく深呼吸をした。



「嫌じゃないの。ただ………。」


「ただ?」


「社長でしょ?緊張するのは当たり前じゃない?」


「………社長じゃない。俺の親だ。」


「それでも会社の社長でしょ?」



止めていた手を動かし、パンを口に入れた。尚輝は黙って私の様子を窺っている。



「実家に行くのは緊張する。ほら、挨拶とか………どうしたらいいとか。」


「………。」


「服だって普段着でいいのかとか。」


「…………。」


「尚輝に相応しくないって思われたらとか。」



目の前のブランチに視線を落とし、一人言を黙々と話す。それを尚輝がじっと聞いている。



「兎に角、尚輝との交際に反対されたら……とかって考えちゃうんだよね。」


「反対?」


「家柄とか釣り合ってないし、ただの秘書だし。本当はもっと相応しい女と付き合って欲しいって思ってるかも。」



沈黙が流れ、チラリと尚輝へと顔を向けた。
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