空に虹を描くまで


陵の思わぬ言葉に心臓の脈が上がる。

心の準備はできていない、とは言えども、自然と足は早歩きになる。

いつもよりも大きめの歩幅で、次々と歩いている人を抜かして行く。


スーツを着ている男の人よりも早く歩き、何人抜いたか数え切れないくらい。


もう走り出してしまいそうなのを必死で抑え、息を整えながら駅に向かった。


ホームにたどり着くと、きょろきょろと目を動かし陵を探した。


いつもとは違う、私服で少し新鮮な陵を見つけた。

陵は音楽を聴きながら片手でスマホをいじっていた。


見つけた瞬間、時間が止まったかのようにわたしの足も自然と止まった。

今度は逆にみんながわたしを追い越して歩いて行く。


陵に会えて嬉しいはずなのに、胸が締め付けられそうな気持ちになる。


そんなわたしの気持ちとは裏腹に陵はわたしに気付く気配がない。

音楽を聴いてるせいもあってか、わたしが近づいて声をかけないと気づかないだろう。



< 133 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop