空に虹を描くまで
陵の思わぬ言葉に心臓の脈が上がる。
心の準備はできていない、とは言えども、自然と足は早歩きになる。
いつもよりも大きめの歩幅で、次々と歩いている人を抜かして行く。
スーツを着ている男の人よりも早く歩き、何人抜いたか数え切れないくらい。
もう走り出してしまいそうなのを必死で抑え、息を整えながら駅に向かった。
ホームにたどり着くと、きょろきょろと目を動かし陵を探した。
いつもとは違う、私服で少し新鮮な陵を見つけた。
陵は音楽を聴きながら片手でスマホをいじっていた。
見つけた瞬間、時間が止まったかのようにわたしの足も自然と止まった。
今度は逆にみんながわたしを追い越して歩いて行く。
陵に会えて嬉しいはずなのに、胸が締め付けられそうな気持ちになる。
そんなわたしの気持ちとは裏腹に陵はわたしに気付く気配がない。
音楽を聴いてるせいもあってか、わたしが近づいて声をかけないと気づかないだろう。