空に虹を描くまで
すると電車が来るアナウンスが流れた。
陵もその音が聞こえたのか、ぱっとスマホから顔を上げた。
そのまま流れるように、ゆっくりとこっちを向くと視線が重なった。
「あ…」
思わず声が溢れる。
この雰囲気じゃ、どうしてもっと早くに声をかけなかったんだろうって感じだ。
「来てたんだ」
耳からイヤホンを外しながらわたしに近づいて来た。
「あ、うん。わざわざ迎えに来てくれてありがとうね」
「こっちこそ、バイト終わりにわざわざ悪いな」
そんなこと全然苦じゃなかった。
むしろ今日のおかげで頑張れたと言っても過言ではない。
「気づいてたんなら声かけてくれたらよかったのに」
陵がそう言った。
やっぱり不自然だったんだ。
だけど、見とれていました、なんて嘘でも答えられない。
「制服じゃなかったから、ちょっと…疑ってたの」
とっさに思いついた嘘でごまかした。