空に虹を描くまで


「忘れてたんじゃね?花火残ってること」

「ええー?そんなことある?」

そう言いながらも、次から次へと上がる花火を目に焼き付けた。


演出だったのか、本当に忘れていたのかは最後まで謎だったけど、最後の最後まで花火を見ることができて心が弾んだ。

「なんかラッキーだったね。あの後すぐに帰ってたら今頃電車の中だよ」

「たしかに」

「毎年やってるんでしょ?来年も来たいな。あー、でも来年は受験生か」

「受験生でも息抜きは必要だろ。たまにはいいんじゃね?」

「そうだよね!」

約束したわけでもないのに、何故か来年も陵と一緒に行けると思っていた。


「陵、本当にありがとう。今日誘ってくれて」

「いや、俺も佳奈子と花火見れて楽しかったよ」

その言葉に胸が高鳴り、何故か涙腺が緩んだ。

陵の優しい笑顔に何度励まされただろう。


わたしも陵に追いつきたい。

いつからかそう思うようになった。

陵のまっすぐな姿勢に惹かれたんだ、きっと。


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