空に虹を描くまで


練習していた時間に比べ、本番の演奏は本当にあっという間だ。

演奏中は陵やお母さんを探している余裕なんてなかった。


だけど、本当に楽しかった。

演奏が終わった後の拍手を聞いて、心が揺れた。


安心したし、達成感もあった。

そして何よりも、『あぁ、これなんだ』って思えた。

やっぱりわたしは音楽が大好きだし、その演奏を聴いてもらえる誰かがいることに感謝した。


由美たちがわたしに曲を提供してほしいと頼んできたこと、バンドに誘ってくれたこと、今までピアノを習わせてくれていたこと、たくさんの感謝の気持ちが溢れてきて、演奏が終わった時に涙が出そうになった。

必死にこらえて、だけど笑いは絶えなくて。


舞台をはけるのが名残惜しかった。


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