空に虹を描くまで


「あ、佳奈子」

後ろからわたしを呼ぶ声が聞こえ振り返ると、陵が駆け寄って来てくれていた。

「…陵!」

見にきてくれたんだ、と思い嬉しくなった。

「ありがとう。来てくれてたんだね」

「約束したからな」

その言葉に、思わず顔がにやけてしまう。


「あ、お母さん!」

急に由美が叫ぶと、「ちょっと行ってくる」と言って行ってしまった。


今更ながら緊張して目を合わせられない。

「あの曲佳奈子が作ったんだろ?」

わたしは小さくうなづいた。


「すごかったよ。俺、バンドとか音楽とかあんまり詳しくないけど、曲なんか作ったことねえからすげえ驚いた」

「わたしも…初めて陵と会った時、ガラス工芸なんてしたことなかったから、できるって聞いて驚いた」

そう言ってお互い少しぎこちない笑みを浮かべた。

なんだかくすぐったい気持ち。
陵に褒められて何も感じない訳が無い。

わたしが作曲をもう一度始めようと思った原因の一つだ。


「じゃあ、お互いいい刺激になったな」

「え…」
一瞬言葉が詰まる。
わたしも陵に刺激を与えられていたの?

そんなこと考えもしなかったし、そう思ってもらえるなんて思ってもみなかった。

そっか…。
もらってばっかりで情けないと思っていたけど、そうじゃなかったんだ。

「…うん!」


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