空に虹を描くまで
第一章 それぞれの進路
窓から少し冷たい風が吹き、わたしの髪を揺らす。
右手で髪をかき分け、目の前に塞がった視界を広げた。
空を見上げると曇り空で、雨でも降るんじゃないかと思うくらい濁っていた。
灰色によどんだ雲の隙間から、ほんの微かに太陽の光が差し込んでくる。
「佳奈、次移動だよ」
由美が教科書を持ったまま、わたしの前の席に座った。
「あ!ほんとだ」
すっかり忘れていた。
教室を見渡すと残っているのは、わたし達を含め10人もいなかった。
わたしは慌てて机の上に散らばっているペンや消しゴムを筆箱の中に突っ込んだ。
「またボッーとしてたんでしょ?」
由美がにやっと笑いながら問いかけた。
「そんなことないよ」
そう言いながら机から教科書を取りだし、わたし達は教室を出た。
「そういば、今朝のホームルームで進路希望の紙もらったけど、どうするか決めてる?」
この時期になると、担任の先生との進路面談や卒業生の話、なんかで進路について考える時間が大幅に増えた。
「わたしは英語勉強したいから、外大とかがいいかなーって考えてる」
「あー、1年のとき、交換留学行ってたもんね」
由美が、そうそうと頷いた。
わたしの学校では交換留学制度があって、2週間だけ夏休みを使ってオーストラリアに行くことができる。
由美は1年生の時にそのプログラムに参加していた。