空に虹を描くまで
「じゃあ、俺はこっちの電車だから」
「え?あ、そうなの?」
急に横から声がして慌てて返事をした。
「じゃあな」
「あ、うん。今日はほんとありがとね!」
「いいよ」
優しく微笑んで改札を通って行ってしまった。
電車、わたしと逆方向なんだ。
その人が階段を上がっていく背中を見つめていた。
知ってたのかな?
わたしと電車が逆方向なこと。
だから駅に着いた途端、別れを告げたんだろうか?
それとも、由美が声をかけてきたから?
でも、あの言い方だとまるでわたしが逆方向だったのを知っていたみたい。
どっちにせよ、少しずつ距離が離れていく後姿を見て少し寂しく感じた。
「かーな!」
わたしが目を離している間に、由美はわたしのすぐ傍まで来ていた。
「由美!部活、おつかれ」