空に虹を描くまで
由美は右手でスクールバックを持ち背中にベースを背負っている。
毎回部活がある日はこんな大荷物で大変そうだ。
由美はもう慣れたって言ってるけど。
「今の誰?」
「あ!」
由美からそう聞かれてはっと気づいた。
「そういえば、名前聞いてない」
「ええー!?じゃあ名前も知らない人と一緒に帰ってたの?」
「そう…なるね」
そう言うと由美はげらげら笑っていた。
一番肝心な名前を聞くの忘れるなんて、どうかしてた。
向こうはわたしのクラスも名前も知ってくれているわけだし、なんとかなるだろう。
それか金曜日までに探せば済むことだし。
そんなことを考えているうちに由美のバンドメンバーが追い付いてきた。
「ったく置いていくなよな」
文句を言いながらわたしたちの会話に入ってきたのはギターの海くん。
そしてもう一人祐介がいる。
「みんなお疲れ様」
よく練習を見に行くから、由美のバンドメンバーとは仲がいい。
ベースとボーカル・ギターとドラムの計3人で活動しているバンドだ。