空に虹を描くまで
勢いよく教室の扉を開け、息を切らせながら黒板の上にある時計を見た。
よかった。
まだ間に合いそう。
時間を確認すると、ほっと胸を撫でおろした。
鞄から水筒を取りだし水分補給をして、ノートを取り出した。
猛ダッシュで走ってきたから、息がまだ整っていない。
かと言って休んでいる暇もない。
10秒だけ…
そう自分に言い聞かせて、椅子に腰を掛けた。
「ふぅー」
大きく深呼吸をしてもう一杯水を飲んだ。
時計の針が妙に早く進んでいるように感じる。
そろそろ行かないと。
そう決心して腰を浮かせたとき、扉がガラガラと開く音が後方から聞こえた。
音のする方にぱっと顔を向けると知らないクラスの男の子が立っていた。
窓から曇り空にはふさわしくないくらいの心地いい風が吹いてきて、顔にかかっていた髪が、すっとわたしの視界を広げた。
わたしのクラスに何か用事があるのかな。
そう思ったけど、用があるなら向こうから声をかけて来るだろうと思いそのまま黙っていた。
だけど、向こうも何か言葉を発せる雰囲気はなく、少しの間沈黙が流れた。
目があったのにそのまま知らん顔するのも気が引ける。