空に虹を描くまで
悪いから自分から迎えに行くと言いたかったけど、陵の優しく言われて頷くことしかできなかった。
「あ、ここまでで平気」
駅についてわたしは陵に伝えた。
「え?」
少し驚いたように陵が聞き返した。
「むしろ、ここまで送ってくれてありがとうだよ、ほんと」
陵には感謝してもしきれないくらいお世話になった。
「いや、でも」
「バイトある日はもっと時間遅いし、まだ全然余裕だよ」
わたしは陵の言葉を遮って言った。
その言葉を聞いて、陵は「そっか」と微笑んだ。
わたしは別れを告げて改札に入ろうとすると、「佳奈子!」とわたしを叫ぶ声が聞こえた。
半信半疑で振り返った。
だって、陵はわたしのこと井上って呼んでいたはず。
でも、声は陵の声だ。
ドキッとして振り返ると陵が駆け足で近づいてきた。
その姿にまた心臓が大きく脈を打った。