空に虹を描くまで
第三章 風
ーー火曜日の放課後、約束通りわたしは教室で待っていると陵が迎えに来た。
「佳奈子ー!別クラスのイケメンが呼んでるよー!」
クラスメイトが大声で叫んだ。
幸にも放課後だったから、そこまで人はいなかったものの少し戸惑った。
「え!?佳奈子の彼氏〜?」
「違うよー」
何人かの友達がわたしにそう尋ねてきた。
わたしはそれを軽く流してドアに向かった。
「なんか進展あったら報告してねー 。また明日話聞くから」
由美までもがわたしをからかって笑顔で見送った。
すぐそこに陵がいるっていうのに。
そう思いながらも、「ハイハイ」と手を振って教室を出た。
「ごめん、お待たせ」
そこには笑顔でわたしを待ってくれている陵がいた。
「賑やかなクラスでいいな」
「あはは…。まあ、確かにみんな仲はいいかな」
みんなのからかいに対しては特に何も突っ込まず、むしろそういう雰囲気が賑やかでいいというコメントが出てくるなんて、大人だなと思った。
「そういえば、今日は迎えに来れないって」
ふと急に話題が変わった。
「あ、そうなんだ。…よかった」
思わず、声に出してしまっていた。
あっと口を塞いだ時にはもう遅かった。
「ハハッ、やっぱ気遣うよな」
陵は笑いながらそう言った。
「う、うん」
苦笑いをして誤魔化した。