空に虹を描くまで
着くと、たまたま梓さんがスーパーの袋を持って、大通りを挟んだ向かい側で信号待ちをしていた。
「梓さん!」
車の行き来があるから、大声じゃないと聞こえないと思い、思わず大声を出して、梓さんを呼んだ。
わたしの声に気づいた梓さんは、塞がってない方の手をあげると大きく振ってくれた。
もちろん、わたしもすぐ振り返した。
ちらりと横目で陵を見ると、一歩下がってわたしたちの様子を眺めていた。
その陵の姿に思わず頬が緩む。
なんだか子供を見守るお父さんのようだ。
信号が青に変わり、梓さんが渡ってきた。
「こんにちは。この前はありがとうございました」
「こちらこそ、佳奈子ちゃんと会えてよかったわ」
梓さんは笑顔で続けた。
「陵ちゃんも手を振ってくれたらよかったのにー」
「・・・」
陵は特に返事をせず、梓さんも特に気にする様子もなく、わたしたちはガラス工房に入って行った。
「こんにちはー」
扉を開けると、おじさんの姿が見え挨拶をした。
「やっほー」
おじさんは陽気に返事した。
「あ、そうだ。お土産持ってきたんです。これよかったらお二人で食べてください」
「えー!わざわざ良いのに」
おじさんは嬉しそうにお菓子の入った紙袋を受け取った。
遠慮されるよりも、素直に喜んでくれる方が嬉しい。
おじさんは、何のお菓子?と言わんばかりに紙袋を漁っていた。
隣にいた梓さんは顔を出し、紙袋の中を覗いていた。