空に虹を描くまで
授業で使っていたわけじゃないから、その点は安心していた。
だけど、趣味で書いていたノートでほとんどページが埋まっていたから、その記録がなくなってしまい、なんともやるせない気持ちになっていた。
学校に持ってくることなんてほとんどなかったから、家でなくしたんだと思い込み、部屋の片隅まで探していた。
それがまさか学校にあったなんて…。
どうりで見つからないわけだ。
「わざわざありがとね」
たまたまノートの表紙に”Kana”と記してあったから、わたしだとわかったんだろう。
クラスも違うし、知り合いでもない。
名前を調べてクラスまで届けてくれたんだと思うと素直に嬉しかった。
「いいよ」
相手も安心したように、静かに微笑んだ。
ーキーンコーンカーンコーン
そうこうしている間に、授業を知らせるチャイムがなった。
「あー!やばっ!わたし移動しないと!」
改めて次の授業のノートを持ち飛び出すように教室を出た。
「本当にありがとう!」
教室を出る間際にそう叫んだ。