想い心と罪心【短編】
「もう過ぎてる」
慌てもしないし驚きもしない。
ほんとに何なんだろう。
傘を少し高くあげ、彰斗を傘の中に入れる。
「彰斗、びちょびちょだよ」
「んー。それより咲、今日遅かった。何してたの?」
話を逸らされた上に今日どうしたときたよ。
どうしたのはこっちだって。
「今日は帰る約束してないでしょ。だから早くバイト行こっ」
歩き出そうとするけど彰斗は動こうとしない。
「彰斗?」
「送る」
思ってもみない彰斗からの言葉。
「今日は咲ん家まで送る」
傘から出て歩きだす彼。
なにがなんだか分からない私は、とりあえず後ろから追いかけてって、彼の頭に傘がかかるよう隣を歩いた。