想い心と罪心【短編】
「時田先輩………」
どうやら彼女は私のことを知ってるらしく、私の名前を呟いた。
その直後、急に私をキッと睨み付けてきた。
「知ってますよ。彰斗くんがこんなに濡れてるの先輩のせいだって」
私の………せい?
「あんだけ待たせて、傘にも入れてあげないなんて最低です。彰斗くんがどんな気持ちで…………」
話している途中で彰斗が彼女の口を手で塞いだ。
「喋りすぎ」
っと一言言うと、私を見つめた。
私は何も言えなくて彼から目を逸らす。
『先輩のせい』
そうだ。私のせいだ。
これで彰斗が明日風邪をひいたら…………。
自然と足が彼らと反対の方を向き、走り出していた。
彰斗が私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたけど、私の足は止まることなんて知らずにただそこから逃げ出していた。